薄膜と聞いて、なんのことかすぐにわかる人は少ないでしょう。薄膜は読んで字のごとく、薄い膜ではありますが、原子や分子の厚さの膜を多層に積み上げ、電子デバイスをつくるという超最先端の技術であり、いまもこれからも各国の先端企業がしのぎを削るジャンルであることは間違いありません。
本書は、わが国オリジナルの技術が世界をリードする側面をもつ薄膜技術のすべてにわたり、注目すべきポイントにしぼってやさしく解説した入門書です。真空の中でプラズマを利用して新しい素材をつくる薄膜技術で、どのような世界が見えてくるのか、さっそく紹介していきましょう。

原子に迫る超微細・超高密度の世界
『「薄膜」のキホン』
著者:麻蒔立男(あさまき たつお)
定価:1575円(税込み) 色数:オールカラー
刊行:2010年9月 ISBN:978-4-7973-5713-4
<著者>
麻蒔立男(あさまき たつお)
1934年、愛知県生まれ。1957年に静岡大学工学部電子工学科を卒業後、日本電気株式会社に入社、1967年から日電バリアン(現キヤノンアネルバ)に出向。1990年より2010年まで東京理科大学教授ならびに同嘱託教授。日本真空協会個人理事。工学博士。著書に『真空のはなし(第2版)』『薄膜作成の基礎(第4版)』『超微細加工の基礎(第2版)』『やさしい電気磁気学』『トコトンやさしい薄膜の本』『トコトンやさしい超微細加工の本』『トコトンやさしい薄膜の本』(日刊工業新聞社)がある。
第1章 よい暮らしは美と微から
001 美の極致を支える顔料たち 微粉末を美的感覚で塗り分ける
002 写真でたくさんの同じ絵をつくる カラー写真やデジタルカメラ
003 ロボットも薄膜を使って進化する 精密制御は薄膜部品とコンピュータで
004 五感をつくる 視・聴・嗅・味・触覚をつくる
005 人工頭脳をつくる
006 身のまわりの電気製品にも薄膜が使われている
007 分解でなく圧延でどのくらい薄くできるか
008 薄膜をつくり超微細なパターンをつくる
COLUMN 真に空とは
第2章 真空は薄膜づくりの重要な環境
009 真空とは大気圧より低い圧力の空間の状態
010 真空の単位は圧力の単位パスカル[Pa]
011 真空ポンプには吸いだし、吸着の2つのタイプがある
012 真空を測る、分析する 真空計
013 真空装置のつくり方
COLUMN 瞬間質量移動装置の研究
第3章 薄膜をつくろう
014 薄膜材料は気体にされ、固体の薄膜になる
015 ソース(気化源)には大別して4種類ある
016 単層成長と核成長 薄膜の成長①
017 薄膜の内部には多数の欠陥が残る 薄膜の成長②
018 薄膜だけでは使えない 基板との結びつきが重要
019 単結晶膜をつくるために
COLUMN 氏も育ちも
第4章 薄膜には独特の性質が表れる
020 薄膜の密度は小さくなり、厚さも時間とともに小さくなる
021 電気抵抗は変化し、バルクより大きくなる
022 温度変化に弱くなる エイジングなどによる対策をして克服する
COLUMN 薄膜と基板を結ぶ
第5章 基板と薄膜を強く結びつけるための技術
023 基板の平坦性は基本、いまも進歩を続ける
024 前処理で基板の表面を裸にする
025 前処理の仕上げは乾燥、これをおこたるとすべてが無意味に
026 付着強度を上げる薄膜のつくり方
027 ソースを変更して付着強度を上げる
028 膜づけ時なんでも行えるときは薄膜と基板の相性が大切
029 着地点は険しい岩場
030 希望の薄膜の組成を得る
031 大面積デバイス用のアモルファス薄膜をつくり、多結晶化する
032 エレクトロマイグレーション断線とその解決法
COLUMN 太陽の申し子 プラズマ
第6章 薄膜づくりにはプラズマが大切
033 プラズマとその魔力を利用する
034 プラズマをつくるために放電を起こす
035 低圧力(よい真空)を目指しマグネトロン放電を起こす
036 薄膜用プラズマをつくる5つの方法
037 薄膜の大敵はゴミ
COLUMN 望遠鏡もカメラも明るくなった
第7章 古くから用いられた蒸着法
038 蒸着法のソース
039 膜厚を均一にする工夫
040 イオンを活用するイオンプレーティング
041 イオンの活用はさらに進む
042 蒸着材と薄膜の間の組成変化をなくす レーザーアブレーション蒸着
043 透明で電気を通す薄膜をつくる 透明導電膜の蒸着
COLUMN ものは使いよう
第8章 大面積ソース・量産向きのスパッタ法
044 スパッタ率はイオンのエネルギーと薄膜材料によって決まる
045 スパッタされた原子はcosine則に従い、スピードは非常に速い
046 スパッタのおもな方式
047 低電圧・定圧(高真空)を目指したマグネトロンスパッタ
048 半導体ICの高集積化を支えたアルミニウム合金のスパッタ
049 反応性スパッタでつくる高性能抵抗膜
050 酸化物の高温超電導膜がスパッタで解決
051 透明導電膜(酸化物)ITOは低電圧化で解決
052 平面の上に薄膜をつける時代から超微細孔の中へ薄膜をつける時代へ
053 イオンの力を利用して超微細孔の埋め込み
054 高真空スパッタとアルゴンなしの時代へ
COLUMN けむり(気体)から固体(薄膜)をつくる。まるでマジック
第9章 気体から薄膜をつくる気相成長法
055 気体から薄膜(固体)を気相中で成長させる
056 たくさんのCVDの方式が実用化されている
057 IC生産に重要なシリコン系薄膜はCVDでつくる
058 高精彩テレビ用シリコン薄膜
059 高誘電率薄膜と低誘電率薄膜をつくる
060 金属や導体膜も気相成長法でつくる
061 表面改質でつくる酸化、窒化薄膜
COLUMN 水(液体)の中から薄膜(固体)を取りだす
第10章 液体の中で薄膜をつくる めっき
062 進化するめっき技術
063 液体中のめっき膜も真空中の薄膜と同様に核成長する
064 たくさんの工夫により精密めっきが電気の分野で活躍
COLUMN 世界最小のナイフで切削加工
第11章 薄膜を回路やトランジスタに加工するエッチング
065 正確な形状と正しい位置にエッチングしてパターンをつくる
066 気体イオンによるエッチング
067 プラズマづくりが命
068 反応ガスは大切な"ソフト"
069 エッチング条件を決める
070 極細イオンビームで故障修理
071 完全平坦化はCMPで
072 CMPなしの平坦化技術
COLUMN 大きな夢を描き前進しましょう
第12章 薄膜を使って前進 その可能性はかぎりない
073 原子を操って未来デバイスをつくる
074 世界の通信網を進展させる薄膜
075 マイクロマシンで人の命を救う
076 バイオコンピューティング
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