とにかく、ものすごい勢いで殖えている雑草である。がしかし、由緒も正しき有用植物で、都立薬用植物園など格式のある庭園にておすまし顔を披露している。
イチビはとにかく奇抜な姿をしている。太くがっしりとした茎は、ぎったんばっこんと折れ曲がり、柄が長い、ヒキガエルの傘みたいな葉をべろんと広げる。この生え際に小さな花をぽそっと咲かせるが、これが美しい。ブライト・ゴールドの輝きをもち、丸みを帯びたかわいらしい顔をしている。
繊維を採るために渡来したもので、栽培は平安時代に始まり江戸期まで盛んに行われたため、人里の近くで野生化した。驚かされるのは、その繁殖力。かわいらしい花はネコの手ほどなのに、果実は大きくふくらむ。逆さまになった水クラゲみたいな格好をしていて、ひとつの果実に40ほどのタネが生る。これがすごい。

まず、タネはごていねいにも小さな袋に包まれており、成熟すると袋のてっぺんが開き、ポロリと落ちる。これがきわめて硬く、虫はおろか菌類やバクテリアも歯が立たない。完璧に守られた子供たちの寿命は長く、5年くらいはタネのままで暮らせる。絶好のチャンスが巡ってくるまで、じっくりと待って、ひとたび発芽すれば、間違いなく人生を謳歌する。
そんなタネは、解毒、利尿、催乳薬として古くから薬用にされたが、あなたの近くで見つけたとき、ちょっと見てほしい。平安の時代から栽培されていた品種はタネが白い。第二次大戦後に入ってきた変異種は黒く、爆発的に殖えているのがこちら。
いまのところ、道端で平安のイチビにお目にかかったことが、まだない。
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