ケーキを切り分け、ATMの列に並び、オークションで競るなどと、私たちは日々「社会ゲーム」に参戦しています。この人生ゲームに勝つための秘訣は、あるのでしょうか? 悪意のあるうそを撃退する術は、あるのでしょうか? 誰もがほしがるうまい方法を見つけるために、本書は「ゲーム理論」を使って、利害のからむ人間関係のかけひきを、具体例からやさしく導きます。

新ゲーム理論で読みとく人間関係の裏事情
『うそつきは得をするのか』
生天目 章(なまため あきら)
定価:1000円(税込み) 刊行:2008年5月 ISBN:978-4-7973-4482-0
<著者プロフィール>
生天目 章(なまため あきら)
1950年、福島県生まれ。1973年防衛大学校卒業後、スタンフォード大学大学院にて博士課程Ph.Dを取得。航空自衛隊に勤務後、1986年より防衛大学校およびジョージメイソン大学情報工学部客員助教授。現在、防衛大学校情報工学科教授。専門分野は「エージェント」「複雑系」「計算論的社会科学」。著書に『ゲーム理論と進化ダイナミクス』『マルチエージェントと複雑系』(森北出版)、『戦略的意思決定』(朝倉書店)などがある。
<担当編集者からのメッセージ>
「ライアーゲーム」というドラマ(原作はマンガ)がありました。このドラマでは、登場人物たちが互いの所持金をかけて敵味方に分かれ、与えられたゲームのルールのもと、相手をだし抜いて勝利する方法を考えます。文字どおり、うそつき(ライアー)のゲームだといえます。そこに登場するゲームのいくつかは、本書で紹介しているゲーム理論を応用したものです。
ゲーム理論といえば、「囚人のジレンマ」が有名でしょう。これは、囚人2人がともに黙秘するか、自白するか、一方だけが裏切って自白するかで、課せられる懲役が極端に変わるというものです。ここで囚人は、互いを信じて黙秘すれば2人とも軽い刑になるのに、欲にくらんで互いが裏切り、結局どちらも重い罰を受けることになります。自分の利益を優先することが、集団としては好ましい選択にはならないことを単純化した例といえます。
昨今の環境問題や、ファーストフードでの値下げ競争など、自分の利益ばかり考えていると、全体としておかしな方向に走ってしまう例はいくつもあります。
本書はゲーム理論の入門書として、ゲーム理論で検討される人間関係(個と個、個と集団、集団と集団)が、次々と登場します。たとえば、ケーキの切り分け方でもめることだってあるわけです。そうした具体的な事例を使って、そのときにどのような選択をすることが、自分にとって、また集団にとって有利なのか不利なのかを、利得行列と呼ばれるマトリックスで考えていきます。「うそつきは得をするのか」という命題も、こうしたゲーム理論の考え方を適用して、利得の視点で考察しています。結果は本書をご覧ください。
さて、冒頭のライアーゲームに登場したものに、「密輸ゲーム」というものがあります。ゲームの条件などはドラマと多少異なりますが、その考え方(解き方)をくわしく紹介しています。これなど「なるほど!」と、ゲーム理論のおもしろさがわかる好例だと思います。
<目次>
第1章 社会の仕組みを読みとく
人間関係を浮き彫りにするゲーム理論/ケーキの分け方にもルールは必要/ケーキを公平に分配する方法/慣習とゲーム理論/社会の営みから生まれる“知恵”/なぜ人は行列に並ぶのか?/なぜうわさを伝え合うのか?/うわさの伝わり方/なぜ失敗は共有されないのか?
第2章 ジャンケンと三すくみの関係
ジャンケンによる決め方/ジャンケンの歴史/世界中でプレーされているジャンケン/ジャンケンに見られる文化の違い/ジャンケンと二者択一の原理/三すくみ関係の利用/二者択一問題:コインの裏表当てゲーム/ジャンケンゲームの表し方
第3章 人間はどのように行動するのか
力の結集はなぜむずかしいのか/公共財ゲームと“ただ乗り”/公共財ゲームにおける普遍性とは/ただ乗りを防ぐには/人間行動の普遍性とは/人間の良心と犠牲的精神/最後通告ゲームとは/最後通告ゲームの解/人間は公平を好む/公平性と不平等の回避/戦略的互恵性(お返し戦略)とは/戦略的互恵性の普遍性/戦略的互恵性の限界
第4章 見える相手とのかけひき:ゲーム理論入門
「ライアーゲームにも登場したゼロ和ゲーム:密輸ゲーム/命運を握る支配戦略ゲーム/個人と全体の利害が一致しない社会的ジレンマ/匿名ゆえの悪魔のささやき:取引ゲーム(ジレンマゲーム)/ジレンマゲームとは?/目先の利益に走りやすい集中ゲーム:力の結集/異なる選択が有利になる分散ゲーム/相手しだいで戦況が動くタカ・ハトゲーム/堂々巡りゲーム(信用ゲーム)/確率によって手を変える混合戦略/非ゼロ和ゲームの均衡解/ゲームの解の求め方/ゼロ和ゲームの解
第5章 社会ゲームの裏側
社会ゲームは何を扱うのか/ただ乗りするのは、理由がある/社会的ジレンマは悩ましい/混雑を解消する妙案は?…少数派ゲーム/イス取りゲームを少数派ゲームに応用する/譲り合いが理想的なルールを生む
第6章 みんなの意見は正しいか
勝ち馬に乗りたい「美人投票ゲーム」/投資家の顔色をうかがう「マネーゲーム」/美人投票ゲームでの“読み合い”/綱引きの意外な歴史/1000人で引くときの勝敗は?…綱引きゲーム/綱引きと先送りは社会の縮図/行列の長さは真実を伝えるか/ベストセラーを生むカスケード現象/裸の王様と沈黙の螺旋/暗黙の内の協調/解説:フォーカル・ポイント/合成の誤謬/個と全体の関係のむずかしさ/創発現象と意図せぬ結果/解説:創発と逆説
第7章 繰り返しゲーム:継続的な関係が生む知恵
結果が良し悪しを決める/進化ゲーム/縄張り/解説:テリトリー・ゲームと順位制/影響力の武器/解説:希少性の原理/なぜ模倣するのか/赤の女王説と共進化/繰り返しジレンマゲーム
第8章 うそつきは得をするのか
なぜうそをつくのか/悪につながる虚偽との違い/人をだます/取引と詐欺の違い/戦略研究の歴史:相手を操作し、相手から操られる/トーマス・シェリングの功績/個人情報の虚偽/だまし合い(1):退路を断つ/だまし合い(2):生死をかけた腹の探り合い/だまし合い(3):瀬戸際戦略/社会の信用(1)/社会の信用(2)/うそとどのように向き合うか



















































































































































































































































